ピカピカのキッチン by 父
実家に帰省中。
相変わらず古いキッチンだ。
いつもバタバタと料理する母は、
一気に片付ける派で、
キッチンは時折、山盛りの洗い物に占領されている。
しかし、今日、食後に見ると、
見たこともないくらいピカピカで
スッキリ片付いていた。
何と…
父が洗い物をすべてしたそうな。
今年70才。
公務員として仕事一筋ん十年。
これといった趣味もなく、
毎日黙々と働く背中を見せてくれていた父。
まさか、父が洗い物や洗濯をするなんて
思いもしなかった。
ただ、昔から、
アイロンがけだけは父の仕事だった。
私の制服のプリーツスカートのひだも
父の手によって保たれていた。
仕事を終え、退職した後、趣味もないし、
ただ老け込むだけかと心配していたが、
やりがいを見つけたようである。
ひと安心。
おだやかで、ゆったりとした
日々を送っているようだ。
私も自宅に帰ったら、
まずキッチンをピカピカにしよう。
父が何十年も働く姿を見せてくれた。
私たちを育て上げてくれた。
そして、第二の人生で、家事をきっちりする姿を
みせてくれている。
決して押し付けない。
黙って、ただ家族のために働く
父の背中をまだまだ見ていたいと思った。